杉作J太郎×伴ジャクソンが語る東映ピンキー・バイオレンスGUIDE TALK

『東映ピンキー・バイオレンス浪漫アルバム』

杉作J太郎・植地毅 編著(本体2000円+税・徳間書店刊)

映画『BACK STREET GIRLS -ゴクドルズ-』の源流となる、60〜70年代の東映ピンキー・バイオレンス路線の作品群を詳細に紹介した究極のファンブック。さらなるピンキー・バイオレンスの深みにはまりたい方はご一読を!

『東映ピンキー・バイオレンス浪漫アルバム』

1. 東映ピンキー・バイオレンスとは何か?

まず簡単に説明しますと、「東映ピンキー・バイオレンス浪漫アルバム」の編著者・植地毅さんが命名したもので、60年代後半~70年代前半に公開された東映プログラムピクチャーの中でも、特に女性を主人公とした暴力とセックスを追求した作品群を括るジャンルを指します。

杉作世間では「女性が強くなってきた」なんて話題が今更出ていますけど、昨日や今日の話じゃないってことなんです! 我々の知る限りにおいて、当時の東映の映画館では、大胆な女性上位運動が盛り上がっていたわけですから!

ちなみに、ほとんどの物語のフォーマットは、当時の東映の大黒柱であった任侠路線からそのままスライドした感じですよね。

杉作それは間違いないです。でも実は大きな違いがあって、鶴田浩二さんや高倉健さんが描いていたのはビシッとした縦割りの男尊女卑の世界。ところが、ピンキー・バイオレンスはそれに対してアンチの立場に立っている。横のつながりが大事なんです。

具体的に言いますと?

杉作プライドや仁義のためじゃなく、仲間や自由を守るために戦う。「女番長(スケバン)」シリーズや「女囚さそり」シリーズなんて、まさにそういう話じゃないですか。

ああ、なるほど。

杉作あと、セックス、金儲け、保身、そんな男たちの欲望に翻弄され続ける女性たちの怨念みたいなものが、作品に込められていると思いますね。

男性社会に対するアンチの姿勢ですか。東映の作品の方向性を考えると、珍しいじゃないですか。当時盛り上がっていたウーマン・リブ運動ともリンクしているのなら、そこまで先鋭化していたのか、という驚きもありますね。

杉作とはいえ、残念なお知らせですけど、当時東映の映画館に女性客はほとんどいませんからねー(笑)。女性客に訴える目線は皆無で、むしろ作り手が訴えたいのは、女性の裸やショック描写だった。でも、東映の才能豊かな監督たちは、世間より遥かに先んじて、女性の内面に潜む強さをキャッチして、それをスクリーンに叩きつけているんです。だから、むしろピンキー・バイオレンスは、今の時代にピッタリの作品群かもしれないですよ?

まさに再評価の時期だ、と。

杉作スタッフ・キャスト、共に気合が入っていますから、時代を超えて伝わるものがありますよ。あと、この路線はどこか暗い面もあるのが特徴的ですね。

基本、ドロドロしたムードは感じますね。

杉作音楽で言うとマイナーコード進行。そこに悲劇や涙が加わる。そういう意味でも、今回の「ゴクドルズ」がその系譜にある作品と言えるわけです。任侠映画のパターン、ジェンダーの境で揺れる3人の主人公の重い設定、そこに徹底的なアクションが加わる。まさにピンキー・バイオレンスの新たな地平と言える作品なんじゃないですかね。

2. ピンキー・バイオレンス代表作への誘い

●『女番長』シリーズ

鈴木則文監督の『女番長ブルース 牝蜂の逆襲』(71年)から本格的にスタートした、池玲子・杉本美樹を一躍スターダムに押し上げた人気シリーズです。ヤクザや悪辣な男性に搾取されそうになる不良少女たちが自身の自由を求めて戦う、というストーリーが展開します。出し惜しみせず、勇ましく裸になる女性陣の存在感は圧倒的ですね。

杉作当時SNSなんかがあったら、池さん・杉本さんはとんでもない人気者だったんじゃないですかね。あと、不思議なもので、若い女性が徒党を組むという絵は、男性のそれよりも遥かにカッコ良く見えるし、悲壮感がある。そういう意味でも見どころは十分ありますから。

女性たちの「自由になりたい」という気分を、不良少女の反抗に託してエンターテインメントとして魅せるのが、実に東映スタイルですよね。

杉作うん、セックスで女性は縛られないぞ、ということを見事に描いている。今でもそこを誤解している男性が多いと思うから、現在でも観る価値は十分にあるよね。裸はいっぱい出るし、セックス描写も多いけど、そこに堕さないところが実に凛々しいですよ。

●『女囚さそり』シリーズ

篠原とおる先生原作の人気コミックを、伊藤俊也監督×梶芽衣子さん主演で映画化した『女囚701号 さそり』(72年)が大ヒットを記録。以後このコンビで、『第41雑居房』(72年)、『けもの部屋』(73年)を製作。長谷部安春監督にバトンタッチした『701号恨み節』(73年)でシリーズは一度幕を閉じますが、その後、多岐川裕美さん、夏樹陽子さん主演でリブートされることになります。

杉作ピンキー・バイオレンスの中で、最もファッショナブルなシリーズですよね! 鶴田さんや健さんは、梶さんのレベルまでカッコよくはなれないですから、これもまた女性主人公の強みですよ。

それはどうしてですか。

杉作カッコつけすぎると、任侠ものなんかではキザ扱いで、大抵それは悪役になるんですよ。例えば、内田勝正さんとかね。

あ~、なるほど。ストライプのスーツを着るような方向性。

杉作その流れで別作品に触れますけど、やはりピンキー・バイオレンスの大傑作である『0課の女・赤い手錠』(74年)の杉本美樹のファッション、覚えています?

主人公の秘密捜査官・零はトレンチコートを着ていましたっけ。

杉作あれと同じ髪型・格好をした若い外国人女性をこの前目撃したんだよ!(爆笑) 今見てもあの恰好がオシャレだと思えるんだから、これはもう相当な先取りだよね。さらに言うなら、後のさそり役・夏樹陽子さんはモデル出身なわけだから。

その目線で選んでいる訳ですね。

杉作最後に一言、『けもの部屋』に出演された李礼仙(現・李麗仙)さんのファッションも一見の価値ありです!

●『芸者』シリーズ

石井輝男監督の『温泉あんま芸者』(68年)からスタートした、温泉街を舞台に旅情とエロスを楽しむ艶笑ものですね。シリーズの中では特に鈴木則文監督作品、池玲子主演の『温泉みみず芸者』(71年)、杉本美樹主演の『温泉スッポン芸者』(72年)が人気です。

杉作今の若い人には想像できないかもしれませんけど、当時の映画は「笑い」も大きな客寄せの要素だったんですよね。このジャンルは裸も見られますけど、基本的は「あー、面白かった!」で終わって、記憶にまったく残らないというね。多分、今の映画とは立脚点が違うんだよ。でもね、さすがに芸者映画だけの単独上映は、当時でもさすがにないだろうね~。メインのやくざ映画との2本立てということで、渋い男の世界を観た後のデザートみたいな感じだったと思いますよ。今観てもポップで明るくて、楽しめると思います。

●石井輝男監督の異常性愛路線

杉作出ました~! これがあるから、ピンキー・バイオレンスは世界的に注目を浴びた、といっても過言はないですね。

異能の映画監督・石井輝男が手掛けた、「徳川女系図」(68年)からスタートした、アンモラルなセックス&バイオレンスをテーマにした作品群ですね。

杉作これらが訴えたいのは、男女が一緒にいるといろんなことがあって、それによって恐ろしいことが起こるというね。

ちょっと、説明がざっくりし過ぎてますよ!

杉作ある意味、若者の童貞率を上げている作品群かも知れない(笑)。そういう意味では、このジャンルの中でもアダルト度が相当高いし、深いところまで描いている。普通のドラマなら、間違いなく各作品のクライマックス手前の描写で止めていますよ。

もはや娯楽を超えているというか。

杉作そう、人が立ち入ってはいけないエリアに到達しているんです。『明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史』(69年)で主役の吉田輝雄さんが持つ疑問が、まさにそれ。

あの映画のラストシーンは素晴らしいですよ。

杉作ねえ。あの映画、終わっても全然気が晴れないですから(笑)。まあ奇想天外ですからね。あ、今気づきましたけど、今回の『ゴクドルズ』は石井作品の風味がありますよ。『徳川いれずみ師 責め地獄』(69年)で由利徹さんや大泉滉さんの声を曽我町子さんたちがアフレコしていたじゃないですか。あれと同じ様な演出がありましたからね!

言われてみれば、確かに!

杉作あと、多くは語りませんけれど、劇中に挿入されるトイレのシーンなんかも実験的で、S・キューブリック作品みたいなインテリジェンスを感じさせますから! これは観てのお楽しみ!!

3. 初心者に観てほしいPV映画5選

杉作やはり李礼仙さんを観てもらいたいということで『女囚さそり けもの部屋』、あと夏樹陽子主演の『新・女囚さそり 特殊房X』(77年)。

「さそり」で2本! いいんですか。

杉作やっぱり2作ともカッコいいんですよ。今の人たちにもそれが伝わると思うので、これは外せませんね!

女番長ものからは、『女番長ゲリラ』(72年)なんかがいいんじゃないですか。

杉作うん。女番長映画って、世界でも珍しいジャンルなんですよ。若い娘が裸になって暴れたり、仁義をきりあうなんていう浮世離れした場面があるかと思いきや、辛い処遇や悲しみはとことんリアルじゃないですか。このセンスを評価せずして、人類は次の世代には行けませんよ!

ハハハハ! まさに『2001年宇宙の旅』のモノリスだと。

杉作絶対今の若い人は観てないでしょう。観たら絶対マネしますって! で、鈴木監督・石井監督の異能が炸裂した「やさぐれ姐御伝」シリーズを1作扱いで。

池玲子主演の『猪の鹿お蝶』(73年)と『総括リンチ』(73年)ですね。

杉作『総括リンチ』のラストカットは是非観てほしいね! そして最後は、内藤誠監督の『番格ロック』(73年)! この作品、青春の刹那的瞬間を上手く切り取っていると思うんですよ。どこに出しても恥ずかしくない作品なんですが、何故これが今、ソフト化もされず鑑賞困難なのか。不思議ですねえ(笑)。

最後に大きい宿題を残しましたね!